岡山県内の病気療養児支援で多職種が連携した実践事例集
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8 「この学年で進級したい」と泣いてしまうこともあったようです。保護者、医師、看護師と何度も会議をし、関係者間で治療中の生徒の体調を優先しながら進めることを周知し、遠隔授業の開始当初は1時間で疲れる様子もありましたが、慣れてくると3時間程度の授業を受けることができていました。 遠隔授業中の課題として治療のスケジュールと、欠課授業のスケジュールの兼ね合いをどうするかということ、授業が遅れる事への心理的負担はありましたが、体調の面を考慮し無理して授業を受けることなく、中止にすることもありました。 一時退院できた際には、感染症対策のために学校内の別室からの遠隔授業も実施できました。人員配置の課題や学校内での連絡やプリント等のやり取りは学校内でスムーズに行うことができました。学校内での遠隔授業の際は生徒の発言する声も大きく、安心して学習ができている様子が見られました。 遠隔授業の際に、学校側の校内LANを活用するため校内のパソコンを使用しました。病室にも有線LAN環境が整備されていたこともあり、遅延のない安定した通信環境となりました。 学校側には360度の集音マイク設置により、先生が黒板の左右に移動した場合や、他生徒の発言や意見も聞き漏らすことなく授業に参加できるように工夫をしました。 主治医からは「病室で勉強する姿が増えてきました。治療も含めてモチベーションに繋がっています。協力してくれた関係者の人たちに改めて感謝したいです。」とコメントをいただきました。 現在は大学へ進学し、お世話になった病院の小児科で働くことを夢見て頑張っているようです。私たちにつながる前には、「諦めるしかない。休学する?」という問いに対して、生徒本人の思いは変わることなく一時退院時に体調がすぐれない中も、頑張って授業を受けていた姿が記憶に残っています。この事例は、生徒本人の意志の強さが周囲の関係者の気持ちをもつなぎ、進級へつながった事例です。 【生徒の変化】 遠隔授業の回数を重ねていくと、クラスメイトも慣れてきて生徒同士の会話のやりとりが増えていきました。授業で先生が失敗するシーンでは、日常の学校内で起こる楽しそうな様子が生徒側へも聞こえてきて、笑い声が重なる場面もありました。当時は病院側にも教員が配置されていたため少し緊張している様子もありましたが、学校側の教員への連絡伝達がスムーズで、関係者間でのコミュニケーションも増えていきました。 グループワークのある授業では、生徒本人の「積極的な参加ではなく、クラスの友達と話をしながら、授業の様子を見たい」という希望を叶える形で実施する配慮もあり、安心して授業に参加できている様子がありました。 【生徒本人からのコメント】(2022年現在) 最初は緊張や不安の気持ちが多くありました。本当に上手くできるんだろうか、授業の迷惑でないのかと考えていましたが、先生や友達と同じように授業を受けていく中で、「私も一緒に勉強出来てるんだ!みんなと進級するために頑張らないと」と思うようになりました。また、その気持ちは治療にも大きく影響し、勉強も治療も頑張って『みんなと一緒に進級したい』と強く考えました。 【保護者からのコメント】 ある日突然、病気になり不安でいっぱいの時、高校生活も諦めないといけないかもという問題にもぶつかり、親子共々諦めようとしていました。 しかし、この制度で不安要素を1つ取り除けて、安心して治療に専念することができたと思います。病気は、いつ、誰がなるか分かりません。病気になってしまった高校生も、退学、休学だけの選択ではないことを知ってもらい、夢を諦めないでもらいたいです。

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