岡山県内の病気療養児支援で多職種が連携した実践事例集
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13 私たちポケットサポートのようなNPOだけで病気を抱える子どもたちに関する諸課題は解決できません。慢性疾病を抱える子どもの8割以上は地元の小中学校へ在籍しているというデータがありますが、子どもたちは病院⇔自宅⇔学校と、療養しながらいろいろな場面で多くの人とつながっており、必要な支援を届けるためには学校や医療機関との連携が必要不可欠です。 認定NPO法人ポケットサポートは2015年に法人を設立し「病気を抱える子どもたちが将来に希望を持って暮らせる社会づくり」を目指して、病気療養する子どもたちの「学習支援」「復学支援・相談」、本人や家族が同じように闘病する仲間たちと知り合える「交流支援」、社会への「理解啓発」、「関係機関連携」を実施しています。 主な対象は長期入院や長期にわたる病気療養や治療が必要な、小児がんや心臓病などの小児慢性疾病の子ども(小学生~高校生)です。 その中でも、障害者手帳を持っていない子どもや、医療的ケアが必要でない子どもが約50%というデータもあり、自学や自習ができる状態でも次のような課題が最近、表面化してきています。 ◆学校生活に時間や活動内容の制約がある ◆退院していても自宅療養が必要である ◆治療のため入院や退院を繰り返している ◆入院治療中の学習遅れや経験の不足 私たちは、このような病気や感染症対策・体力減退によって起こる機会損失や空白(ポケット)を支援(サポート)しています。 本事例集では5つの事例を紹介しましたが、年間で受ける約100件の相談の中には、好事例ばかりでなく、未だ継続しながら支援を行っている相談内容も存在します。病気の種類やその状態、学年や住んでいる地域などの違いからも、いかに個別最適化されたサポートが必要かということもご理解いただけるかと思います。 そのため現在、ポケットサポートでは繋がりが育む地域支援ネットワーク「岡山モデル」を目指して、県内の各学校や医療機関はもとより岡山市保健所、岡山県教育庁特別支援教育課・病気療養児教育サポート相談窓口に加え、県立早島支援学校の病弱部、各市町村の教育委員会、地域の小児慢性疾病担当部署・担当者、また他県や他地域の病気療養児支援団体と共に課題解決できる、支援体制を広げています。 2020年から現在は、コロナ禍の影響ですべての活動をオンラインとし、感染症のリスクに対応した形で実施しています。職員の中には幼少期から病気療養を経験している当事者(ピア)も多く、子どもたちの気持ちに寄り添い、気持ちの理解ができる支援者が対応していることも特徴です。 最近つながった保護者から「6年前の突然の発症で周囲に病気療養する子どもがおらず辛い日々だった。ポケットサポートに出会えたことで、楽しい活動やニュースレターでの情報で前向きになれた。最初は連絡を躊躇していたが相談して良かった。今後は、慢性疾病を抱えて成人された方の思いや進学について、病気の子どもの親の話も聞きたい。」とのメールを頂きました。 この事例集をご覧いただいた学校現場の先生方や、医療関係者、行政関係者の方も、私たちの活動の内容や現状等を知っていただき、支援が必要な子どもたちやご家族へ、適切な支援が届けられるようご協力いただければ幸いです。 最後になりましたが、本事例集制作にご協力いただきました皆様に、感謝申し上げます。 多様な関係機関と連携した地域支援ネットワークを岡山から全国に 病気を抱える子どもたちが将来に希望を持って自分らしく暮らせるように

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